メッセージ - C年 復活節

テーマ: 「イエスは、祝福しながら彼らを離れ、天に上げられた。」(ルカ2451節)

 

イエス・キリストは、三日目に死者の中から復活して弟子たちに何度も現れ、四十日目に身体と共に御昇天なさったと福音の中で書かれています。 今日、教会が御昇天を記念してお祝いをするに当たり、私たちはこの救いの神秘に与るように、御言葉にもとづいてこの出来事の意味を心に留めましょう。

人となった神の子、キリストは、歴史上の一人の人間として決まった場所で生れ、生活し、活動なさいました。御自分の死と復活によって成し遂げられた救いの業も歴史的な事実であり、それは、ローマ総督ピラト時代にユダヤ人の過越の祭の準備の日に、エルサレムで実現されました。キリストの業を目撃して体験できた人は、時間的にも、範囲的にも非常に限られていました。復活したキリストに出会った人が数百人に留まっていると書いています。ところで、御昇天の出来事は、キリストの救いの業を超越させました。キリストとの地上の出会いとその救いに与ることは、時間的にも空間的にも限られていたが、御昇天によって普遍的なものとなりました。キリストは、ご自身の存在をみ言葉と秘跡の内に秘められ、成し遂げられた救いの神秘を弟子たちに委託し、彼らを全世界に派遣されました。こうして、いつの時代の人も、どこでもキリストに出会うことができ、代々とこしえに誰もがキリストの救いに与ることができるようになりました。

キリストの御昇天をもって、地上の人生は一時的なものであることを実感させられます。キリスト者とは、地上の人生の目的を知る人であり、キリストのように生きるため、神様の愛とキリストの死と復活について証しするために生きる者です。神様のお望みは、地上の生活を終わった後にすべての人が天国に入ることです。人間が送る地上の生活は必ず終ります。ところで、キリストは御昇天をもって、人生が天国への旅であることを示し、天国を目指していく模範を示してくださいました。キリストは、御昇天の際に、十二使徒を、御自身の復活の証人として全世界に遣わされました。

ところで、キリストは弟子たちに自分の思いや気持ちに従がって証しすることをお許しなりませんでした。本日の福音の中でキリストは御昇天の直前に十二使徒に、「わたしは、父が約束されたものをあなたがたに送る。高い所からの力に覆われるまでは、都に留まっていなさい。」(ルカ24章49節)と言い残してくださいました。また、第一朗読の中で聖ルカは、イエス様が御昇天の直前に次の言葉を弟子たちに語ってくださったと言います。「あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける。そしてエルサレムばかりでなく、ユダヤとサマリアの全土で、また、地の果てに至るまでわたしの証人となる。」(使徒言行録1章8節)と。即ち、キリストは、聖霊降臨を待つようにお命じになりました。そして、聖霊に満たされた者は、初めてキリストによる救いの出来事について証しすることができます。換言すれば、聖霊ご自身が私たちを道具にして、キリストの死と復活について証しするのです。

現代教会の福音宣教も、聖霊の望まれるままに行われる所では、多くの実を結びますが、人間の計画を優先する世俗化の環境では衰える現実に遭遇します。今日、典礼上で再現されるキリストの御昇天は、十二使徒に倣って聖母マリアと共に祈りの内に留まります。洗礼と堅信の秘跡の中で頂いた聖霊が自分たちの内に働くように致しましょう。キリストの死と復活によって成し遂げられた救いの業を自分たちの生活を通して実現して行くことができますように祈り、支え合って行きましょう。天に昇られたキリストは、弟子たちを祝福していたように、私たちの信仰生活を祝福し、御自身の霊を持って、世の終わりまで私たちと共に生きておられます。