メッセージ - A年 四旬節

四旬節に私たちは、イエス・キリストの十字架の意味を思い起こし、その復活に向けての道のりを一緒に歩みます。今日の福音では、イエスが荒れ野で40日間断食をして過して誘惑を受けられます。40という数字と荒れ野という場所は、旧約の時代にモーセがイスラエルの人々をエジプトでの奴隷状態から導き出して、四十年間荒れ野を旅しながら約束の地に向かうという話を思い出させますけれども、まさにこのイスラエルの試練を、イエスご自身も追体験して歩まれました。

モーセに導かれて荒れ野を旅していたイスラエルは、エジプト人の軍隊に追われ、食べるものもなく、苦しい中で、エジプトに奴隷として戻ってもいいと考えたり、自分たちに対する神の助けを疑って他のものに頼ろうとしたりしました。そしてイエスご自身も、40日間の荒れ野での断食と誘惑という試練を通して、食べ物や身の安全は確かに必要だけれども、それでも根本的に、本当に頼るべき所はどこなのか、ということを明らかにされました。「人はパンを食べて生きるけれども、それだけでは本当に人間として生きていることにはならない」「人は神の口から出る言葉によって生きている」ということはそういうことです。

復活祭の前の四旬節にあって、主の苦しみと十字架を思い起こす私たちも、私たち自身の生活の中で、この荒れ野での試練を体験します。苦しいときに、自分にとって本当に大切なものが何かを考えさせられるときがあります。その時、私たちは主イエスの歩みに倣って、良い選択をすることができるでしょうか。